私達は、夜市でテンションを下げてからというもの、昼はパワースポット、夜はマッサージと自分磨きにかまけて、夜遊びを忘れていた。
最終日の夜は、若いお兄さんを肴に酒を飲もう。
そう言い出したのは必然といってもよかった。
しかし、ホテルの近くにはそのような若者はひとりも見当たらないし、おしゃれな店も見つけられない。
せっかくなのでちょっと遠かったけれど、タクシーで台北の信義区にある、最先端のクラブへ向かった。
そこはファッションビルの9階にあるクラブで、平日なのに地元のオシャレな若者達で入口に100人程の列をなしていた。
10年以上前は日本にもたくさんあった、あのド派手なクラブの雰囲気にそっくりだった。
人間離れした顔が小さくて背の高い黒服の男の子達や、とんでもなく短いスカートを履いた女の子達を見て、友人2人は恐れおののいていた。
私達と比べると、彼女たちが同じ人間としての形をとっているとは見えなかった。
しかし、ここまで来たからには、なにかしらの爪痕を残して帰りたい。
そんな気持ちで自分たちを奮い立たせた。
30分くらい経ってやっと入口まで到達して中に入ろうと思ったら、頭の大きさが半分しかない黒服の男性に声をかけられた。
台湾語はわからないので、拙い英語で会話した結果、台湾のクラブはパスポートがないと入れないらしいということだった。
私は何とか食い下がったけれど、虫を見るような目であしらわれた。
私達は同じ人間だと思われなかったのかもしれない。
結局私達は、近くにあるテラス席のオシャレなバルで夜を楽しんだ。
「さっきのお兄さんの冷たい目が忘れられない」と友人は言った。
私の下調べ不足のせいだと心苦しい気持ちになった。
しかし、友人は、にこにこしながら今度台湾に来たらまた行きたいという。
友人に新しい世界が開けてしまったようだ。
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